〈産科〉取り扱い疾患・検査・手術
基本ガイド
妊娠したと思ったら
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まずはご自身で検査してみてください
- まずは市販の妊娠検査薬(検査キット)で検査をしてみてください。安価なものでも、精度・感度は病院で使用されているものとほぼ同じです。
- 最後の性交渉から3週間後の検査で反応がでていなければ、その時点で妊娠の可能性はほぼありません。
- ただし、最後の性交渉から3週間経過していない場合、まだ妊娠の反応がでないことがありますので、1週間ごとに検査を繰り返すのが安心です。
- もしご自身で検査薬を購入できない場合は、病院までご相談ください。
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いいえ。産婦人科の受診は、最後の生理開始日から5(~6)週間後、生理の予定日を1~2週間過ぎたごろでの受診をお勧めします。
- 妊娠6週までに産婦人科外来を受診する目的は、子宮外妊娠(異所性妊娠)ではないことを確認することです。超音波検査(エコー)で子宮の中に赤ちゃんの部屋(胎嚢)が認められれば、子宮外妊娠の可能性はほぼありません。最後の生理開始日から4週ごろだと、正常の妊娠経過でもまだ確認できないことが少なくないため、受診は最後の生理開始日から5週後くらいがおすすめです。
- 一方で受診のタイミングがあまり遅いと、万が一子宮外妊娠だった場合その発見が遅れてしまいます。最悪の場合、お腹の中に大出血を起こして救急車で搬送され、緊急手術が必要なだけでなく生命の危機状態に陥るおそれがあります。このため、妊娠6週ごろまでの受診がおすすめです。
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何か症状がある場合は、週数によらず受診していただいて結構です。
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こちらをご参照ください
中絶をご希望の方へ
母子手帳の貰い方
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超音波検査で胎児心拍動(赤ちゃんの心臓の動き)が観察できてからもらいに行くことをお勧めしています。詳しくは産婦人科外来にてご案内いたします。
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はい、貰えます。分娩予定日が正式に決定される前に、母子手帳を貰ってきていただくこともあります。その際は仮の分娩予定日をお知らせしますので、市町村の窓口へお伝えください。その場合は、第1回目の妊婦健診で分娩予定日が正式に決まります。
手術
人工妊娠中絶
中絶にかかる費用
手術前に全額お支払いいただきます。
手術前の検査 | 約2~2.5万円 |
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人工妊娠中絶術(妊娠7週まで、日帰り) | 99,000円(税込) |
人工妊娠中絶術(妊娠8~11週、日帰り) | 121,000円(税込) |
人工妊娠中絶術(妊娠12~21週、3~4日間入院) | 約35~40万円* |
*出産一時金の直接支払制度を選択した場合は、手術前のお支払いは不要です
妊娠週数による中絶方法の違い
妊娠11週までと妊娠12週以降とで大きな違いがあります。身体的にも経済的にもご負担の少ない妊娠7週までの手術をお勧めします。
妊娠7週まで | 妊娠8~11週 | 妊娠12~21週 | |
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費用 | 9.9万円 | 12.1万円 | 約35~40万円* |
入院 | 不要 | 不要 | 3~4日間 |
方法 | 手動真空吸引法 | 手動真空吸引法 | 子宮口を開く処置の後 陣痛促進剤による分娩 |
麻酔 | 静脈麻酔 | 静脈麻酔 | なし (無痛分娩の選択可) |
役所への届け出 | 不要 | 不要 | 必要 |
火葬 | 不要 | 不要 | 必要 |
休業 | 不要 | 不要 | 原則産後8週間 ※本人からの請求で6週間 |
*請求により出産育児一時金(50万円)を受け取ることが可能です。
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手動真空吸引法 (MVA)は、プラスチック製のやわらかい吸引管を用いて、妊娠組織を吸い出す方法です。患者さん一人ずつ使い捨ての専用キットを使用します。これまでの方法(金属製の器械でかき出す掻爬法、金属製の吸引管で吸い出す電動吸引法)に比べてより安全でより体への負担が少ないとされているほか、手術後の痛みが少ない印象があります。
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静脈麻酔で行いますので、痛みの心配はございません。手動真空吸引法では、手術後の痛みも非常に軽いのが特徴です。
- 静脈麻酔とは、眠くなる薬と痛み止めを点滴する麻酔です。
- 万が一痛みがある場合は、静脈麻酔を追加したり局所麻酔(傍頸管ブロック)を併用して、痛みが十分に除去します。
- 手術後の痛みは全くないか、あっても痛み止めの内服で治まることがほとんどです。
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手術のせいで不妊症になってしまうことはほぼありません。以前は不適切な掻爬法や子宮内感染などによって子宮の状態が悪くなり、不妊症となることがあったようです。しかし、適切に抗菌薬を使用したり子宮に優しい手動真空吸引法を用いたりすることで、最近では中絶手術で不妊症になることはほとんどありません。
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低用量ピル、子宮内避妊具(リング)をお勧めします。詳細は避妊法のページをご参照ください。また、コンドームが外れたり破れたりした、避妊なしで性交渉されたなど避妊に失敗したと思ったらすぐに緊急避妊法をお考えください。
流産手術
当院では子宮への悪影響や手術後の痛みが最も少ないとされている手動真空吸引法を行っています。術後の痛みが軽く、翌日には復職することが可能です。
流産手術の方法
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麻酔の方法(静脈麻酔) 主に静脈麻酔という、痛み止めと鎮静剤を点滴する麻酔を用いています。眠っている間に手術が終わります。必要に応じて傍頸管ブロックという局所麻酔を子宮口の周囲に行うことがあります。 |
手術の合併症
- 多量出血:多量出血によって輸血が必要になることがありますが極めて稀で、通常の出血量はほんのわずかです。
- 子宮頸管裂傷:子宮口を開く処置(ラミセル、頸管拡張器)で子宮口(子宮頸管)が避けてしまうことがありますが、極めて稀です。
- 妊娠組織が残ってしまう:慎重に手術をしても少量の妊娠組織が残ってしまうことがあります。多くは自然に剥がれ落ちて出てきますが、稀に自然に剥がれずに追加治療が必要になることがあります。
- 子宮の穿孔:手術操作で子宮に穴が開いてしまう可能性があります。手動真空吸引法で起こる可能性は極めて低いとされています。
- 子宮内感染症:流産後は子宮内に病原体(細菌、真菌、クラミジアなど) が住み着いて炎症を起こしやすい状態です。このため、手術後は初回の月経が終わるまで、性行為やタンポン使用はお控えください(シャワーは当日から可)。
- 異所性妊娠の継続:極めて稀ですが、子宮内妊娠と子宮外妊娠が同時に起こっている可能性があります。この場合、子宮内の妊娠組織を取り除いても、子宮外妊娠が続いてお腹の中に大出血を起こすおそれがあります。流産手術後の腹痛はあってもごく軽いので、腹痛が続く場合は電話でご相談ください。
※手術にはリスクがありますが、待機療法にもリスクがあります。両者のリスクは同程度とされています。
手術の予定
日帰り手術で行ないます。
- 外来診察:胎児の心臓が動いていないことを再確認後、子宮口を開くため水分を吸収してゆっくり膨らむラミセル®という棒を入れます。
- 入院:病棟へ移動して手術の準備(着替え、点滴など)をします。
- 手術:手術室へ移動して麻酔をかけ、眠っている間に流産手術を行います。
- 麻酔が醒めるまで病室でお休みいただきます。
- 退院:麻酔が完全に醒めてふらつきなく歩けるようになったら、診察後にご帰宅いただけます。手術当日は急にふらつくことがありますので、車や自転車などの運転をお控えください。
計画分娩
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医学的には分娩誘発の必要がなくても、以下のような事情でご希望の場合には分娩誘発(計画分娩)を行っています。
- 交通事情や家族の事情
- 病院到着前に家や車中で分娩になってしまうおそれがある場合(子宮口がかなり開いている,前回の分娩時間が極端に短かったなど)
- 前回死産となっている妊婦さんが待機的管理に不安を抱いている場合
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社会的適応(医学的には必要がない)による計画分娩には、以下の利点・欠点があると報告されています。
- 計画分娩の方が母児の状態が良かったという報告(帝王切開率が低い、高度の会陰裂傷が少ない、死亡率が低い、NICU入院率が低いなど)があります。
- 計画分娩の方が児の状態が悪かったという報告(呼吸障害が多い、NICU入院率が高い、発達障害高リスク児の割合が高いなど)もあります。
- 妊娠38-39週以降の計画分娩では、自然の陣痛を待った場合に比べて、母児の状態は変わらないか若干改善するという報告が多い傾向にあります。
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こちらをご覧ください。
分娩誘発・陣痛促進
分娩誘発・陣痛促進
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自然の陣痛が来る前に、陣痛促進剤で人工的に陣痛を起こしてお産にすることです。
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自然の陣痛が弱いときに、陣痛促進剤で陣痛を強くすることです。
以下のような場合、母児の安全のため陣痛促進剤の使用をお勧めしています。
分娩誘発が必要な場合
社会的適応 | 医学的には分娩誘発の必要がなくても、以下のような事情でご希望の場合には分娩誘発(計画分娩)を行うことがあります。 交通事情や家族事情
子宮口がかなり開いている、あるいは前回の分娩時間が極端に短かった場合(病院外で陣痛が来て急激にお産が進むと、病院到着前に家や車中で分娩になってしまうおそれがある)
前回死産となっている妊婦が待機的管理に不安を抱いている場合。 |
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羊水過少 | 赤ちゃんは十分酸素がもらえなくなると、最も大事で最も酸素不足に弱い脳に血液の流れを集中させます。すると、その分腎臓に血液が流れなくなって、腎臓に流れる血液から作られる尿が減ります。羊水の大部分は赤ちゃんの尿ですので、羊水が減るというわけです。つまり、羊水過少=赤ちゃんが酸素不足になりかけの状態です。あまりひどい酸素不足になる前に、早めにお産した方が安全です。 |
胎児発育不全(FGR) | 胎児発育が不十分な場合、胎児への栄養や酸素の供給が悪化している可能性があります。胎児が十分な酸素を貰えなくなる前に分娩した方が安全です。 |
前期破水 | 破水すると、通常は1日程度で自然に陣痛が起こります。しかし、自然に陣痛が来ないと、子宮内や赤ちゃんに細菌が感染するおそれが徐々に高くなります。このため、感染を防ぐために適宜分娩誘発をお勧めしています。 |
妊娠高血圧症 | 病状が悪化すると母児にとって非常に危険な合併症のおそれがあります。早めにお産する事で、合併症の発生率を下げることが期待できます。 |
陣痛促進が必要な場合
微弱陣痛 | 陣痛が弱いとなかなかお産にならず、母児ともに大きなご負担になります。また、あまり長く待ちすぎると子宮も疲れてしまい、陣痛促進剤の効果が乏しくなるだけでなく、産後の出血が多くなりやすくなります。そこで、陣痛が弱くてお産の進みがよくない場合、早めの陣痛促進をお勧めしています。 |
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陣痛促進の方法
子宮口があまり開いていない場合は陣痛促進剤があまり効きませんので、事前に子宮口を開く処置(子宮頸管拡張術)を行います。
子宮口を開く処置(子宮頸管拡張術) | |
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ミニメトロ® | 水風船のような器具です。子宮内で膨らませるとお腹が張って、子宮口が3-4cmまで開いてきます。 ※赤ちゃんの頭が押し上げられて、臍の緒が先に出てきてしまうことがあります(臍帯下垂、臍帯脱出)が、ミニメトロは小さいので危険性は非常に低くなっています。万が一起こってしまうと赤ちゃんが高度の酸欠状態に陥ることがあるため、超緊急帝王切開を行います。 |
陣痛促進剤の点滴 | |
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オキシトシン(点滴) | 最も調節がしやすい安全な陣痛促進剤です。 ※少量から開始し、陣痛や赤ちゃんの状態を見ながら徐々に増量します。 |
※陣痛促進剤には、過強陣痛(陣痛が強すぎ)による胎児機能不全(酸欠状態)、子宮破裂、羊水塞栓症のおそれがあります。 ※陣痛促進剤の使用中は常に分娩監視装置で陣痛と胎児心拍数を監視します。 ※十分な監視下に陣痛の強さを適切に管理すれば、自然の陣痛と比べて危険性が高くなることはありません。 |
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陣痛促進剤を使わない場合、①自然に様子を見る、②母児の安全を考えて帝王切開にする、という二つの選択肢があります。①は、母児の状態が悪化する可能性があり、帝王切開に切り替える確率、母児に問題が発生する確率が高くなると予想されます。②は帝王切開という手術のリスクを無視すれば安全な方法ではありますが、経腟分娩が可能なうちはなるべく行うべきではないと考えられます。
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〈子宮口があまり開いていない場合〉
●1日目
午後:入院、胎児心拍数モニタリング
ミニメトロを入れる
●2日目
朝:胎児心拍数モニタリング
陣痛促進剤(オキシトシン)点滴
人工破膜(人工的に破水させます)
〈子宮口が開いている場合〉
●1日目
朝:入院、胎児心拍数モニタリング
陣痛促進剤(オキシトシン)点滴
人工破膜(人工的に破水させます)
〈次のような場合は、帝王切開に切り替えます〉
・胎児心拍数陣痛図で赤ちゃんが苦しそう(一般的には心拍数が低下する)な場合
・十分陣痛が来ているのに、赤ちゃんの頭が下がってこない場合
・重症高血圧(160/110以上)で当日中にお産にならなそうな場合
・その他、母児の状態が悪化して短時間でお産しないと危険な場合
無痛分娩
当院ではご希望の方に無痛分娩を提供しています。
料金 | 無痛分娩料30,000円+薬剤料(約5,000円~8,000円) |
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方法 | 原則として計画無痛分娩 |
麻酔方法 | 主に硬膜外麻酔、場合により脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔 |
無痛分娩麻酔管理者・麻酔担当医 | 小原幹隆(産婦人科専門医) |
注意
- 予約制です。月間予約枠は10名を予定しています(お申し込み順)。
- 事前に担当医による無痛分娩クラスの受講が必要です。詳細は外来にてご案内いたします。
- 妊娠38週以降の計画無痛分娩を予定していますので、その前に陣痛が来てしまった場合は無痛分娩をご提供できない可能性が高いことをご了承ください。
- 血液や背骨の異常、高度の肥満などの場合は、無痛分娩を行えないことがございます。
- 詳細は以下の説明書、マニュアル、サイトをご参照ください。
- ご不明の点は産婦人科LINE公式アカウントよりお問い合わせください。医師が回答させていただきます。
帝王切開
お腹と子宮を切開して赤ちゃんを娩出させる手術です。以下のようなケースで行います。
予定帝王切開
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緊急帝王切開
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手術・麻酔の方法
麻酔の方法:脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔、腰椎麻酔)
腰から背骨の中(にある脳脊髄液の中)に細い針を刺して麻酔薬を注入し、痛みを取り除くものです。横向き(下図参照)あるいは座った状態で行います。数分程度で足が動かせなくなり、腹部に向かってしびれが広がって痛みを感じなくなります。麻酔が十分に効いていることを確認してから手術を開始します。意識は保たれていますので、赤ちゃんの産声を聞いたり顔を見たりすることができます。手術後も2~3時間はしびれが残ります。
手術中に痛みが出てきた場合は、痛み止めの注射を使ったり、全身麻酔に切り替えたりする可能性があります。通常は麻酔科医が担当します。
帝王切開の方法(皮膚の切開方法)
横切開 | 〈メリット〉
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縦切開 | 〈メリット〉
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※手術時間、合併症発生率、手術後の痛みはほぼ同じです
※医師により横切開をお受けできないことがございます |
続いて、子宮の下の方を横に切開(子宮下部横切開)し、児を娩出し胎盤を取り出します。その後、子宮の切開創を縫合し止血を確認してからお腹を縫合します。
手術所要時間は1時間ですが、癒着などにより手術時間が延長することもあります。また、上記は一般的な手順であり、状況によっては子宮体部縦切開を行うこともあります。
手術や麻酔の合併症
手術中や手術後に以下のような合併症が起こることがあります。これは手術を受けられる方どなたにも起こる可能性があり、細心の注意を払っても100%回避できるものではありません。詳しくは外来にて説明いたします。
骨盤位外回転術
骨盤位、いわゆる「さかご」の分娩方法には以下の三つがありますが、当院では帝王切開か外回転術のいずれかを選択していただいております。
- (骨盤位分娩)
- 予定帝王切開
- 骨盤位外回転術
1. 骨盤位分娩
骨盤位分娩は熟練を要し、また予定帝王切開に比べて赤ちゃんが無事に産まれて元気に育つ確率が低いことがわかっているため、当院では行っておりません。
2. 予定帝王切開(妊娠38週頃)
多くの病院では帝王切開が唯一の選択肢です。
しかし母体にとって帝王切開は100%安全に施行できるとは限らず、出血による輸血・子宮摘出、感染の問題、麻酔による事故、術後の血栓症(肺塞栓、エコノミークラス症候群)の問題などがあります。また、帝王切開を選択した場合、次の分娩も帝王切開になる可能性が高くなるだけでなく(多くの病院では帝王切開を受けたことがある場合は経腟分娩を許可していません)、子宮破裂や癒着胎盤など大変危険な合併症の危険性も高くなります。
赤ちゃんは、最終的には問題なく退院できますが、経腟分娩に比べて呼吸の状態が安定するのに時間を要することが多く、保育器に入って酸素を吸ったり、稀に人工呼吸が必要なため大きな病院へ搬送することがあります。
3. 骨盤位外回転術(妊娠37週頃)
母体のお腹から赤ちゃんをくるっと回して、さかごを治す処置です。入院(1泊2日~2泊3日)して手術室で下半身麻酔(脊髄くも膜下麻酔)をかけて行います。不成功の場合はそのまま帝王切開を行います。
骨盤位外回転術の方法
- 張り止め(塩酸リトドリン)の点滴をします。お腹の張りがないと子宮の壁が軟らかくなって回りやすいためです(外回転術終了まで)。動悸や手のふるえが出ますが、徐々におさまります。
- 手術室に入って、帝王切開と同じ脊髄くも膜下麻酔を行います。理由は二つあります。一つは外回転の痛みがないと回りやすいためです。もう一つは外回転術で赤ちゃんが苦しそうなとき、すぐに帝王切開できるようにするためです。
- お腹の上から赤ちゃんを手で回します。このとき、超音波断層法(エコー)で赤ちゃんの心拍数を確認しながら行います。赤ちゃんは苦しくなると心拍数が遅くなるためです。
- 逆子が治った場合は、胎児心拍数モニタリングで赤ちゃんが元気なことを確認してから病室へ帰ります。
- 逆子が治らないとき、赤ちゃんが苦しそうなとき、性器出血が認められたときは直ちに帝王切開に切り替えます。
成功率
約80-90%くらいです
合併症
- 胎児機能不全(赤ちゃんが苦しがること):時々ありますが、短時間で回復するため帝王切開が必要になることはさほど高くありません。万が一そのような場合でも、すぐに帝王切開ができる状態ですので、後遺症を残す可能性はほぼありません。
- 常位胎盤早期剥離(胎盤がはがれてしまうこと):1%未満とされています。
- 臍帯下垂:へその緒が赤ちゃんよりも下に入り込んでしまう状態です。通常は2-3時間で自然に治りますが、破水したり陣痛が来たりした場合は緊急帝王切開を行います。
- 破水、陣痛発来:逆子が治っていれば、そのままお産できます。
さかご体操
さかご体操はあまりお勧めしていません。その理由は、①骨盤位を治すというデータがないこと、②体操をすることによってお腹がはりすぎて逆に赤ちゃんが回りにくくなってしまうこと、③無理な体操によって早産の危険性があること、の3点です。ご希望であれば行っていただいて構いませんが、お腹の張りには十分注意してください。