がんの治療

今日のがん治療は手術・放射線治療・化学療法・緩和ケアを柱に総合的に行われています。当院では、これらを効果的に組み合わせて治療を行うために、キャンサーボードの設置や緩和ケアチームの介入など、各科の専門性を活かしたチーム医療を実践しています。

また、周術期(入院から回復までの手術前後を含めた一連の期間)における歯科医師、歯科衛生士による専門的な口腔ケアを行い、治療に伴う合併症の予防や副作用の減少に取り組んでいます。

診断と治療

手術療法

がん組織をメスや内視鏡を用いて切り取る治療方法です。がん細胞を取り残さないよう、術中の病理検査を行うこともあります。完全に切除できれば再発の可能性はありません。早期胃がんでは転移がなければ100%手術で治ります。

内視鏡的切除

大きく体を傷つけることなく、がん細胞を取り除くことができます。食道・胃・大腸にできた小さながんにおいては内視鏡的に切除する方法が選択されます。

身体に負担の少ない、安全な治療を目指して消化器内科・消化器外科が連携して治療を行っております。


外科腹腔鏡手術

内視鏡検査

化学療法


手術療法や放射線療法が局所のがんに対して行う治療なのに対して、化学療法は特別な場合を除いて全身にいきわたってがんを治療します。がんの種類と進行状況によって、がんを小さくして取り除きやすくしたり、手術後・再発や転移予防など補助的に使うこともあります。

次々に開発される抗がん剤の進歩は近年目覚ましく、がんの特定の分子に作用する分子標的薬など、がんの性格に応じたオーダーメイドの治療も可能になってきています。そのため、有効性の高い治療を、副作用をコントロールしながら、患者さんの状態や生活にあわせて安全に実践することが求められています。


化学療法

外来化学療法センター

生活のスタイルにあわせて入院・外来での化学療法が可能です。訪問看護ステーション母恋との連携により、通院負担を軽減することも対応できます。

詳しくはがん相談支援センターへお問合せください。


放射線療法

根治的放射線治療

放射線を用いて腫瘍増殖を抑えたり、死滅させることを狙います(放射線を当てて、がん病変を小さくする)。寝ているだけで治療ができるので負担が少なく、形態や機能を温存できることが最大の特徴です。

10分~20分程度の照射時間なので、入院することなく外来通院で行うことができます。がんを制御するために行う「根治照射」、手術前後に行う「術前術後照射」、化学療法と組み合わせて相乗効果を狙う「併用療法」があります。


治療前→1ヶ月後→3ヶ月後→8ヶ月後

✔CHECK
  • 2017年7月 リニアック装置を更新
    従来の機械より正確かつ、高出力のピンポイント照射を可能に
  • 2018年 胆振初 IMRT(強度変調放射線治療)を実施
    詳しくはこちらをご覧ください。

緩和的放射線治療

放射線治療では、腫瘍を取り除くだけではなく、がんによる痛みなどの苦痛を和らげるために行われることもあります。大きくなるがんに圧迫されて発生する痛みや、骨に転移した場合は骨折を防止するためなど、様々な観点から実施されます。

当院で実施している緩和的放射線治療の例としては、以下の内容が挙げられます。

  • がんによる痛み・麻痺・痺れなどの神経障害の緩和
  • がんによる出血の止血
  • がんによる気道の狭窄・閉塞の緩和による呼吸状態の改善
  • がんによる消化管の狭窄・閉塞の緩和
  • 脳への転移による神経症状や頭蓋内圧亢進症状の緩和

痛みの治療

がんでは、発生部位などにより痛みを生じることがあります。このような痛み(疼痛)の治療は緩和ケア科と麻酔科が連携して実施しております。入院のみならず外来での治療も可能です。


緩和ケア科


麻酔科


病理診断


手術などで採られた主要組織の一部を顕微鏡で観察し確定診断を行います。がんであることを判断するほかに、がんの性質、広がりを評価・診断することも同時に行います。

手術の際は、がんの存在の有無や性質、手術で取り切れたかなど組織をくまなく検査し、正確で安心な手術に役立つ情報を迅速に提供します。

がんは多彩で、姿や形、性格など何種類とある特徴に気づき、正確な診断を目指しています。


乳がんを診断する針生検によって
採取した組織の顕微鏡像


①正常な乳腺組織:腫瘍の無い部分


② 腫瘍(がん):がん細胞がかたまり
をなして増えている様子


がんの種類と診療科



胃がん・大腸がん・食道がん
消化器内科・消化器外科・放射線科


病気の診断と治療を消化器内科・消化器 外科チームで協同で検討しながら行っています。昭和大学横浜市北部病院消化器センターから医師派遣を受け、ポリープを約50倍に拡大する最新の拡大内視鏡 や特殊光観察による精密内視鏡診断を実施し、転移の可能性の少ない早期のがんには内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)を使って切除します。また、腹腔鏡を用い た体にやさしい手術も積極的に実施しています。

外科手術後、必要とする患者さんには補助的に抗がん剤(化学療法)も積極的に行っています。


✔CHECK
  • 2013年 大腸CT検査(CTコロノグラフ)導入
    コンピューター処理による3次元画像を確認し、外科手術前の正確な状態把握などに活用しています。
  • 2021年 EndoBRAIN-EYE 導入
    胆振地域初となるAIによる内視鏡画像のリアルタイム解析により、病変部位の発見を促し、精密な診断を実施します。詳しくはこちらをご覧ください。

大腸内視鏡の観察と治療の例

色素を散布し、拡大内視鏡で通常の85〜100倍まで拡大して観察・診断して観察、診断を行い適切に切除します。


1.通常観察

1.通常観察


2.色素散布

2.色素散布


3.EMR(内視鏡的粘膜切除術)

3.EMR(内視鏡的粘膜切除術)


肝臓がん
消化器内科・消化器外科・放射線科


最新の画像診断法を活用し正確に評価を行なっています。

病気の大きさや広がりにより幹細胞切除術、薬物治療(化学療法、免疫療法)のほか、TA(C)E(肝動脈(化学)塞栓療法)、経皮的マイクロ波凝固療法、ラジオ波焼灼療法(RFA)などの局所治療を積極的に行っています。

また、発がん予防のためB型/C型肝炎ウイルス治療も行い、早期発見に努めています。


ラジオ波焼灼療法

肺がん
消化器内科・消化器外科・放射線科


肺がんの鑑別診断では、転移および原発巣を把握するPETをはじめとする核医学分野の検査のほか肺機能検査、細胞診を行い正確な診断を行います。開胸手術のほか早期の肺がんに対しては外科と連携し低侵襲な胸腔鏡手術も実施しています。

胸部レントゲンでは確認しづらい陰影をPET検査等を駆使して診断をおこなっております。


PET画像

胸部レントゲン画像

胆道がん・すい臓がん
消化器内科、消化器外科、放射線科


典型的な症状が生じないことが多いために、超音波・CT・MRI・内視鏡を用いて早期発見に努めています。

治療は膵頭十二指腸切除術を中心にした、根治的切除を積極的に行い、内科と共同で術後のケアや化学療法を行います。切除不能例や転移例では最新の薬物療法、放射線治療を行っています。また、黄疸を合併することが多く、内視鏡による治療を第一選択としています。


乳がん
乳腺外科、外科、放射線科、形成外科

乳腺のしこり、乳頭分泌などで来院された患者さんに対し視触診、マンモグラフィ、超高機能音波診断装置による精密検査を行います。穿刺組織診での正確な最終診断を行い、乳がんと診断された場合はその拡がりを正確に把握し治療方針を決定します。

手術療法・抗がん剤・ホルモン療法・放射線療法を個々のがんの特性に応じて組み合わせて治療を行います。手術では根治性を損なわないことを原則としたうえで、可及的に乳房を温存する方針で治療にあたっています。


✔CHECK
  • マンモグラフィ検診施設画像認定
    技師・読影医師・装置の質の維持向上に努めています
  • 西胆振で唯一のマンモトーム生検
    超音波検査では確認できない石灰化に対するマンモグラフィ・ガイド下の組織生検を行っています



頭頚部のがん
耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、外科、放射線科、形成外科


内視鏡検査のほかPET/CT、CT、MRIを用いて腫瘍全般の診断を行います。

  • 口腔がん・咽頭がん・喉頭がん
    耳鼻咽喉科および胆振地域唯一の専門医の在籍する口腔外科、形成外科が機能や形態の温存・再建を目指し手術をチームで行います。また、CT同室型の放射線 治療システムを用いた放射線治療や、化学療法を効果的に組み合わせ治癒率の向上や治療に伴う口やのどの機能低下を緩和と回復をめざし専門性を活かして治療 にあたり、患者さんの生活の質を重視した集学的治療を行っています。
  • 甲状腺がん
    超音波検査・血液検査、穿刺細胞診を行い正確な診断を行います。 進行した甲状腺がんに対しては耳鼻咽喉科・外科・形成外科の連携した手術治療を行い対応しています。


口腔外科(左)、耳鼻咽喉科(中央)、形成外科(右)によりチームアプローチで生活の質を重視した治療を実践します。


婦人科系のがん
産婦人科、放射線科


化学療法は入院だけでなく外来化学療法室を利用し、外来通院でも行う事が可能です。

  • 子宮頸がん
    子宮の入り口の部分(子宮頸部)にできるがんです。手術療法、放射線療法、化学療法の組み合わせにより治療を行います。また初期癌に関しましては、侵襲を少なくするための縮小手術も行っております。
  • 子宮体がん(子宮内膜がん)
    子宮の奥の部分(子宮体部)にできるがんです。原則として手術療法ですが、子宮温存が希望でごく初期のものにはホルモン療法を行う場合もあります。
  • 卵巣がん
    卵巣がんにおいては根治手術が可能な症例は根治手術を施行し、腫瘍が広範に広がっているような症例では術前化学療法により腫瘍を縮小させ、その後根治手術を行っております。

希少がん・小児がん・AYA世代のがん

一部のがんについては当院でも治療が可能です。主治医の判断により他院への紹介となる場合がございます。

その他のがん治療に向けての取り組み

口腔管理の実施
がん治療前、治療中、治療後のお口のケア

手術・化学療法・放射線治療前後に歯ブラシではとれない、お口の中のクリーニングや適切な歯ブラシ方法の指導、必要な応急処置を行い、がん治療に伴う合併症(誤嚥性肺炎や口内炎など)を軽減します。

該当する患者さんにはパンフレットをお渡しし、説明を行っています。



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周術期口腔管理 パンフレット
「治療の前に、専門的なお口のケアを。」



がんの治験


※現在準備中です

がんゲノム治療

がんゲノム治療は現在当院では対応しておりませんが、治療をご希望の方は紹介が可能です。まずは主治医にご相談ください。


がんのリハビリテーション


※ ただいま準備中です。